■テレビゲーム
テレビゲーム
我が家では、誕生日やクリスマスが近くなると「おもちゃ」の話になります。
毎回「テレビゲーム」を買うか買わないかというバトルが展開されますが、最近ではシーズンになると「ゲームはダメだよ」と宣言しています。そんな私ですが正直に告白すると、プレステ1もプレステ2も持っています。もっとも最近、ゲームはしなくなりましたが・・・。
そんなわけで私はゲームを決して嫌いではありません。
子どもへの「ゲームの影響」というテーマは様々なメディアで報じられ、研究論文も発表されています。受験指導をしている仕事柄、よく受ける質問でもあります。教育関係者の間では、「ゲーム悪影響論」の方が優勢かと思いますが、結論からいうと「ゲームの影響」についてははっきりとした因果関係を示す根拠やデータが示されていないといえるでしょう。
その理由は、「人間の子どもを使って長期間にわたる実験ができない」からです。短期的な実験では、視力の低下、暴力性の増幅、脳の疲労、睡眠障害などが実証されていますが、それが将来にわたって悪影響を及ぼすかどうかは分かりません。
例えば、よくいわれる「暴力性の増幅」ですが、私たちが子どもの頃「ウルトラマン」や「仮面ライダー」など正義の味方が暴力で悪を倒していました。そういうテレビを観た後は、少なからず暴力的になっていたと思います。しかし、その影響として「暴力的な性格になっているか」は分かりません。
逆に「ゲームの有用性」としては、「図形把握能力」など視覚的な能力を向上させる、教育的なゲームは学業不振児に高い効果がある、といった研究結果が発表されています。
そういう意味では、頭ごなしに「ゲーム」を否定することはできないと考えています。
では、なぜ私は我が子にゲームを買うことを拒むのでしょうか。
私は仕事柄、多くの子どもたちと接しています。その中で感じるのは、問題を抱えている子どもに「長時間ゲームをしている子」が多いことがあげられます。今の時代、「ゲームに全く触れない」ことは難しいことです。
我が家でも「ある年齢になれば仕方ない」と考えています。しかし、少なくとも小学校低学年までは、ゲーム・ビデオなどのメディアは極力避けたいと考えています。
その理由としては
1、 ゲームは視力を低下させる
視力の低下はデータとして証明されています。ゲームに限らず、パソコンやテレビもモニターを見るという行為自体は同じです。しかし、ゲームの場合、画面上で自分が主体となって参加しているため、集中して長時間見続けてしまいます。また、コントローラーの長さが短いため、どうしても画面の近くでやりがちということもいえます。
2、 ゲームは人間関係構築に害がある
ゲームが人間関係に直接関係があるかはわかりません。しかし、ゲームは1人で遊ぶことができます。ボードゲームやカードゲームは1人では遊べません。遊ぶために友だちを誘い、交渉するという行為が発生します。
また、テレビゲームの場合、一緒に遊ぶ場合の接点は画面上ということも異なる点です。ゲームで遊んでいる最中は相手との会話は画面を見ながらになります。それが私には何とも不自然な感じがしてしまうのです。カードゲームやボードゲームの場合、実態がそこにあるのでケンカも起こるわけですが、テレビゲームでは実態は画面の中にあるため、順番を争うという以外のケンカは滅多におきません。そういう意味ではゲームでは機械とコミュニケーションをとっているのです。
こどもたちは遊びのやり取りの中で人間関係を学ぶものなのでそういう点で影響があると考えています。
3、 ゲームは常習性がある・やめられない
ゲームは①リセットボタンひとつで繰り返し始められ、②他の人を誘う必要がなく、③前に失敗した場面からスタートできる、という特徴があります。これはコンピュータの良さで、ワープロや表計算、CADなどの仕事では大変便利です。しかし、ゲームの場合、その良さが「やめられない」、という原因になるのです。子どもであっても時間は限られているわけですから、ゲームに時間を費やした分、他の活動時間が減ることは必然といえます。ゲームの時間によって、読書、運動、勉強、お稽古、他の遊び、親子の会話といった大切な時間がごく自然に削られることが問題と考えています。
バランスよく正しく使えば、「ゲームは生活を豊かにし、子どもの成長にも役に立つ」はずです。しかし、「バランスよく、正しく」は人間として成熟した大人であれば可能であっても、子どもには難しいことです。また、幼児期の子どもはゲームの悪い影響(例えば理性や創造力を生み出す前頭前野への影響)を知らず、親が知らないうちにゲームの中での情報がインプットされていくことはリスクといえます。
ゲームの良い点、悪い点、ゲームが与える影響などを正しく認識した上で、「適度に」ゲームをする、そういった年齢に達したら我が家もゲームを与えようか、と考えています。
受験とゲームの関係
最後に私の専門分野である受験とゲームについて経験を記したいと思います。
まず、中学受験では御三家(男子:開成、麻布、駒東、女子:桜蔭、女子学院、雙葉)レベルの学校を目指す子でゲームをやる子はまずいません。例外的に何名かはいましたが、その子たちも時間を決めてメリハリをつけていました(日能研で一番の子もそうでした)。
これはゲームが受験に悪い影響を与えるというよりも「親の覚悟」がそこに表れている気がします。
受験生の親には2つのパターンがいます。
1、 様々なことをやる中で無理なく勉強し、できる限り上位の学校に行かせたい
2、 受験を最優先し、合格のためには他のことの犠牲はやむをえない
価値観の問題なのでどちらがよいともいえません。ただ、経験上いえることは、御三家に合格する子のご家庭でも両方いるということです。
ただし、「1」のご家庭の場合、(勉強においては)幼児期の関わり方で成功し、無理なく上位の成績を取り続けているといえます。SAPIX、日能研、四谷大塚などの塾で断然トップを取っている子はほとんどが「1」のご家庭なのです。
だから、なおのこと幼児期の遊びが重要といえます。
このようなご家庭では幼児期(小学校低学年まで)にゲームを与えているケースは稀です。
幼児期にたくさん遊び、親や友だちとコミュニケーションし、本をたくさん読み、早い段階である程度の人格形成ができているといえるのです。
さて、それらのご家庭においてあるゲームで特徴的なのが2つ。
1、 ルールのあるゲームであること
ゲームでもシューティングや格闘はボタン操作さえ慣れれば頭を使うことはありません。それに対して、将棋、囲碁、麻雀はルールを知り、頭を使わなければゲームを楽しめません。
2、 ロールプレイングより格闘系・パズル系
ストーリーのあるゲームは攻略するまで続きます。必然的に1回のゲーム時間は長時間になり、キリのよいところまでやめられません。それに対して、格闘やパズルの場合、ストーリーがないので予め決めた時間でやめられるのです。
もちろん、例外もありますし、ここに述べたことは私の経験による主観ですのでそれを踏まえた上で参考になればと思います。
最終更新日: 2021-05-17